2014年5月3日土曜日

読書記3:『カラスの教科書』松原始

 
『カラスの教科書』
著:松原始
2012年雷鳥社刊


野鳥観察を始めて、いわゆる愛らしい鳥以外にも色んな鳥を面白がることができるようになりたいなーと思い
色々借りたなかの一冊。
おかげで川でエモノを狙うハシボソガラスなんかを見つける事も。
ずっと以前に新聞書評で見かけて以来、何かの折に目にしていたのだけど、評判以上に面白かった。

タイトル通り、カラスの種類、生態を知り、これからどのように付き合っていくか想像を広げられる「教科書」。
かわいい「カラスくん」たちのイラストと一緒に楽しくお勉強できます。


本文中では特に食事(スカベンジャー=死肉処理者であることが生息環境に影響している)の面が印象づけられる。
そりゃあ人間もメシが喰えるところでなければ住まない。市街地に住むのは当たり前だよなあ。
そのせいで、カラスが「人間の縄張りで生きていること自体」で人間が迷惑をするという見方では、
お互い穏健に暮らすことは難しい。
衛生・景観などの「被害」にどうアプローチしていくか、再考する時期に来ていると言えそうだ。


この本を研究本と分つ大きな魅力はユーモラスな筆致。
著者がカラスを調査する姿がなにかギャグ漫画に出て来そうな感じ。
著者がつぶさに行動をみつめることでわかるカラスの「賢さ」やちょっとおまぬけな行動、
それを熱心に見つけ出す研究者の愛ある姿になにかほっとさせられる。
後半部の「カラスのQ&A」のゆるさににやにや。


カラスの行動目的は昔から何も変わらない。
しかし、今や地球の生息環境形成を主導する人間たちが、変わってきていることを確かめる。
おそらく最終的には現在の生物多様性保全という目標に繋がる、企画制作に成功したこの本を読める事に、
とても嬉しい思いが沸き上がった。

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